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中流の復興 (生活人新書)
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カスタマレビュー
小さな人が世界を変える ( 2008-09-24 )
今年(2007年7月30日)に亡くなった小田実氏の最後の著作。以下、本書の要約。
我々はまず日本が戦争(自衛のための戦争も含む)のできる国なのかということを考えなければいけない。日本には石油がない、食糧自給率はカロリーベースで40%くらい。軍拡論・改憲論こそ「非現実的」であるということを認識しなければいけない。戦後、アウシュビッツに対して国連が「世界人権宣言」を出したが、戦争に正義はないという深い認識から、国連の出せなかった「世界平和宣言」を一国の憲法という形で出したのが日本国憲法。憲法24条・25条は、小さな人間の努力で世界が変えられるということを主張している。「アメリカの戦争」まだ続いている。我々にはその意識が希薄だが、ベトナム戦争に在日基地という形でアメリカに加勢したのは日本である。そういう「被害者が加害者になる」悲劇を止めるためには、大国の手下になるのをやめ、戦争を拒否し、平和友好条約を結ぶことである。軍需産業に依存しなくても経済の復興ができるということを、世界で初めて証明した日本。欧州も人権問題には発言があるが軍事問題にはない。軍隊がもともと組み込まれた国家だからだ。飯が食えなければ自由を欲するどころではない。みんなが飯が食えるように世界を豊かにするために、我々はなにが貢献できるかを考えるのが、自らの自由をどうするかということにつながってくる。この国の小さな市民の復興が世界を変えるところまで来た今、しっかりものを考える必要がある。
なお、巻末の「フィリピンの超法規的殺略」の件は、殆ど知られてないが故に衝撃である。
ブッシュ政権率いるアメリカが民主主義と自由を標榜しながら、「9・11」を盾にとってアメリカに完全に支えられ結託したアロヨ政権の下で、「impunity」(合法を装って非合法の殺し、弾圧、拷問をする)の犯罪を大々的に行い、反対勢力の一掃をはかっている。
平和の使徒・小田実氏の日本人への遺言状 ( 2007-12-04 )
中流とは、敗戦後、非常に貧しかった大部分の日本人に、何とか衣食住が行き渡り、貧困から抜け出したことを象徴する言葉だった。
07年7月30日に癌に冒されて亡くなった小田氏が、敢えてこの言葉を持ち出した根拠は、グローバリゼーションの進行によって、大きな企業はますます大きく、小さな企業は、買収されるか、廃業を余儀なくされる時代に警鐘を鳴らす意図があったとおもわれる。
現在、日本のトヨタをはじめとするグローバルな大企業は、リストラと集約化と非正規雇用労働者の雇用などにより、利益を急拡大する反面、社会の底辺では、年収200万円以下の労働者が、何と1000万人を越えるという異常な状況となっている。
日本中が、「上流」と「下流」に二極化する中で、「格差社会」となった日本人のひとりひとりが、日本社会の不平等に気づいて、社会的混乱が生じないとも限らないのである。やはり、中流社会が崩れた国民の不満と不安を解消する道は日本人の政治意識の向上によってもたらされる民主主義の深化しかない。
私たち日本人は、小田氏の「中流の復活」という言葉を祖国日本に対する最後のメッセージとして受け止めるべきだ。
「理想主義」的ではあるが、現代社会を考えさせられる一冊 ( 2007-10-04 )
必ずしも作者の論に全面的に組するわけではないが、彼の「理想主義」的な考え方は、我々が常に持っていなければならないものであるように思います。そうした「理想」を目標として常に良き日本を良き世界を考えてゆくことは、彼の理想とする「市民社会」(この本の中では「サラダ社会」)に少しでも近づいてゆく道なのだろう。
しかし、現実とのギャップは大きく、時にロマンチスト的に考えられるが、彼の’60年代以降の活躍を見るとき、大きな足跡を残したことに間違いはないと思います。それだけに、残念な人を亡くしたと思います。
この本を読んでいて、日本国憲法の解釈など「目からウロコ」といった部分が多々あり、流石に作者の慧眼に敬意を表したくなりました。
「中流の復興」というタイトルは、この本を矮小化してしまいかねないものだと思いますが、是非多くの人がこの本を読み、現代社会をもう一度考えるきっかけになればと思います。
生涯“ぶれること”のなかった市民主導の崇高な自由平和主義者の遺言。 ( 2007-07-30 )
60年安保の年に生まれた者にとって、小田実と言う存在は、「何でも見てやろう」を書いたベストセラー作家や、「べ平連」での市民活動家として、正に時代の寵児として脚光を浴びた顔というよりも、例えば、代々木ゼミナールの名物講師として、かって「週刊プレイボーイ」誌上で当時悪名高かった愛知の管理教育を糾弾したり、有事立法に反対して「日本はこれでいいのか市民連合」を主宰したり、「朝まで生テレビ」の左派の論客として、大物武闘派右翼にも論争を吹っかけていった気骨な人とのイメージが強い。今手元に、今著の他に、書斎から引っ張り出した「状況と原理」、「政治」の原理「運動」の原理、があり、この3冊が私が読んだ小田の著作の全てなのだが、その趣旨は終始一貫している。それは本当に愚直なまでの「市民」の立場に立脚した反暴力、理想主義の追求であり、平和憲法の堅持と非同盟自由平等の理念だ。かって石原慎太郎に“お経の如き空想的平和主義”と揶揄され、ベトナム解放後のポルポト政権時での虐殺の歴史を責められても、その信念は決してぶれることはなかった。今著は小田の遺言的色合いが強い。一部でべ平連時にKGBエージェントであったとの報道をされたり、好感を持つ者から見ても、正直「絵空事」のようにしか感じられない甘いパートもあるが、大国ばかりではなく世界中を廻り、様々な人々と出会い連帯していったヴァイタリティと、関西弁を繰り出して自由と共生を説くイデオローグとしての人間的な魅力はやはり誰にも代え難い存在だった。「市民」の力の大きさを最後まで信じていた崇高なロマンチストだったと思う。謹んで、ご冥福をお祈りします。
ISBN-10: 4140882247
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Last modified: 2008-12-06

